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2019.10.25

「教育の情報化」の来し方行く末

今から10年前、政府は「経済危機対策」
(平成21年4月)を取りまとめ、文教市場に向けて
「スクール・ニューディール」構想を打ち出した。
「地上デジタルテレビの整備」に667億円、
「学校のコンピュータ、校内LANの整備(公立学校)」に
1,420億円という巨大予算が充てられ、
前者の予算には「電子黒板」も含まれたことで、
一気に電子黒板が学校に普及した。
文部科学省が毎年公開している「学校における
教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、
平成22年3月を境に電子黒板の整備率が
一気に伸びていることがわかる。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__
icsFiles/afieldfile/2018/10/30/1408157_001.pdf

ところが、その年の夏の衆議院議員選挙で旧民主党が圧勝し、
いわゆる「事業仕訳」が始まったことで、
この予算は見直しを余儀なくされた。その結果、
一足早く電子黒板等の導入に着手した教育委員会と、
“様子見”をしていた教育委員会との間で、
その後の学校のICT環境整備に大きな差がついてしまった。
しかし、当時世界的に広まりつつあった電子黒板が、
わが国にも普及するきっかけになったことは確かである。

一方、総務大臣に就任した原口一博氏は
「フューチャースクール推進事業」を提唱し、
翌平成22年度には文部科学省に先駆ける形で、
電子黒板や無線LAN環境を整備した学校での
「一人一台タブレットPC」の実証事業が開始された。
原口氏が野党時代にシンガポールを訪れ、
そこで見た「Future school @ Singapore」がきっかけであった。
1年遅れで文部科学省が「学びのイノベーション」事業で
相乗りする形になり、4年間の実証事業が行われた。
これを機に、総務省と文部科学省の連携事業は継続されることになり、
総務省「先導的教育システム実証事業」と
文部科学省「先導的教育体制構築事業」(平成26年度~平成28年度)、
総務省「スマートスクール・プラットフォーム実証事業」と
文部科学省「次世代学校支援モデル構築事業」
(平成29年度~令和元年)と続くことになる。
来年春にはこのような“二人三脚”が丸10年を迎えることになる。
その過程で、電子黒板、タブレットPC、
デジタル教科書、無線LAN、校務システムなどの
有効性が検証され、多くの好事例が生み出された。

現状では電子黒板は決して目新しいものではなく、
ごく一般的な“教具”になった。
しかし、「大型提示装置」以上の使い方が
されているかというとそうでもない。
デジタル教科書も、教師用デジタル教科書が
小学校を中心に普及したのは確かだが、
児童・生徒用のデジタル教科書の普及はこれからというところだ。
最近は、AI、ビッグデータ、クラウドなどの
キーワードが目立つようになり、
STEM教育にも注目が集まっている。
さて、これから10年後の学校が
どのような“情報化”を遂げているのか、
期待せずにはいられない。

小泉先生

尚美学園大学芸術情報学部教授。 立教大学大学院理学研究科修了。
都立高校教諭、都総合技術教育センター専門教育主事等を経て、 2005年4月より現職。文部科学省主催による教育の情報化に 関する調査研究および各種検討会に参加し、
高等学校共通教科「情報」の学習指導要領改訂にも参画。
2008年5月より文部科学省参与。
その他、経済産業省主催「U-20(アンダー20)プログラミング・コンテスト」審査委員長なども 務める。
著書に『図解チャート よくわかる実習[情報]』 『これで完璧!圧縮・解凍』(いずれも技術評論社)など多数。

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