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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2020.03.27

遠隔教育についての追想(2)

2004年度に、eラーニングシステムを活用した
院内学級と学校間の遠隔授業のプロジェクトがありました。
当時、院内学級を舞台にしたテレビ番組が
放送されていたこともあり、多くの方々からの支援がありました。

院内学級と学校(入院している児童・生徒さんが
転入している学校)間で、ライブ授業が行われるというので
院内学級を訪問させていただいた時のことですが、
授業が始まると、学校の児童たちは院内学級の児童たちを
勇気づけようとする思いが強くあったようで、
とても意欲的に授業を受けてくれている印象でした。
学校の児童たちが院内学級の児童たちを、
ぐいぐいと授業に引き込んでいく様子に見とれていると、
院内学級の児童たちがパソコン画面に
引き寄せられるように近づいて行き、
ディスプレイ画面をのぞき込む近さになっていました。

授業が進んでゆくにつれ、
院内学級の児童たちと学校の児童たちの間に、
隔たりが全くないような、まるで学校の教室の中に
引き戻されているかのような臨場感を感じました。
その時の双方の児童たちの表情や微笑みが強く印象に残っています。

このライブ授業を通して、学校生活から切り離されていた児童たちが、
学校の日常に引き戻されるような可能性が与えてくれる
力の大きさを強く感じることが出来ました。
複数の関係者の方々とご一緒させていただいたのですが、
皆さん感動していらしたようで、
私もいつの間にか目に涙があふれてきて
一生忘れられない感動体験となりました。

その当時の関係者の方に
「ITって言葉に冷たい印象を持っていましたが、
使い方によっては、こんなに温かいものなんですね」と
言っていただいたと記憶しているのですが、
その一言に集約されていたと思います。
つまり、それは協力していただいた多くの方々の
温かい思いや配慮が結集して実現できた結果だと思っています。

このITの温かさを実感した取り組みから得られた知見は、
その後の行政システムの開発姿勢に生かされたと思っています。

今では、当時より簡単にライブ授業が
できるような環境が整ってきたように思います。
一人1台の情報端末もGIGAスクール構想で
実現されようとしている中、一人1台の情報端末があって、
児童・生徒たちがどこに居てもネットワーク越しに
双方向でコミュニケーションしながら
一堂に会したような環境で授業ができれば、
さまざまな場合に助け合うことが可能となると思います。 

門田先生

元倉敷市職員。事務職、入庁後長年にわたり情報システムの研究、
開発、構築、運用、保守を担当。
2002年に教育委員会で、地域イントラネットと
学校園ネットワークシステム構築に参画した後、
2006年から市長部局(情報政策担当)と教育委員会を併任(以後退職まで)。
行政と教育の情報化に携わる。

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