2020.06.19
ステップ0から始める一人1台環境の活用
一人1台環境に向けては、2019年12月に
GIGAスクール構想が発表され一気に進んだ。
それまでは、教育のICT化に向けた環境整備5か年計画で、
2022年度までに3クラスに1クラス分の
学習者用コンピューターを整備することが目標だった。
その違いを考えてみると、いつでも使えるか、
使えるときと使えないときがあるかの違いにあるのではないだろうか。
「“すぐにでも” ”どの教科でも” “誰でも”生かせる一人1台端末」が
ステップ1として示されている。
さらに、「教科の学びを深める。 教科の学びの本質に迫る。」がステップ2。
「教科の学びをつなぐ。 社会課題等の解決や
一人ひとりの夢の実現に生かす。」がステップ3と、
一人1台環境を活用して、対話的な学びの中で深めていくことが示されている。
しかし、多くの学校では未経験の一人1台環境を
いきなり授業で使うことにはためらいがあるだろう。
いきなりステップ1を目指しても、子供のスキルがない中で、
時間がかかっていては使わせられない。
教師自身がどう使わせたら良いかわからない。
機器の不調にどう対応して良いかわからない。
そんな声が出ることが容易に予想される。
まして、休校が続いた中で授業にはそんな余裕はないという声もあるだろう。
そこで、ステップ0からの活用はどうだろう。
朝の会や帰りの会など、教科の学びに拘わらないところから、
子供たちが端末に触れ、活用する機会を作っていく。
必要最低限の基礎的なことだけを指導して、
困ることは全て先生が解決するのではなく、
子供たちが友達と協力し合って解決していく。
相撲でいう四股を踏む場面がステップ0である。
毎日の振り返りをちょっと書くことがあるかもしれない。
授業での振り返りを書くことがあるかもしれない。
友達に伝えたい時に写真や図を見せることもあるかもしれない。
係の仕事でポスターを作るかもしれない。
その中で基礎的なスキルを身に付け、
ICTを生活に生かす場面を体験するステップ0だ。
ちょっと使いの場面を大事にしていくステップ0を通して、
一人1台環境は単にICTを活用することにとどまらず、
子供自身の学びのツールとして、新学習指導要領の理念でもある
主体的・対話的で深い学びの実現に向けていくためのものとしていきたい。
変化を前向きに受け取め、新しい課題に向かっていく力となり、
より良い社会を作り、幸せに生きるための一人1台環境としていきたい。
西田先生
柏市教育委員会 教育研究専門アドバイザー。
元 千葉県柏市立柏第二小学校長、千葉県公立小学校教諭、教頭、校長、
柏市教育委員会指導主事を勤め平成29年3月に定年退職。
2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会委員をはじめ、
文部科学省の委員を多数務める。
主な著書
「だれもが実践できるネットモラル・セキュリティ」(共著)
「学校の情報セキュリティ実践マニュアル」(監修) など