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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2020.07.17

一人1台端末運用上の課題とその対応(1)

2019年12月に文部科学省より、
校内通信ネットワークの整備及び
児童・生徒一人1台端末の整備を中心とした
GIGAスクール構想が発表された。
当初は2023年度までに整備する予定であったが、
新型コロナウイルスの影響で、当初の計画が前倒しとなり、
家庭でのオンライン学習環境の整備を含め、
可能な限り本年度中に整備することになった。

この新型コロナウイルスの影響で、一人1台端末や
情報通信ネットワークの整備の必要性が再認識された。
問題は新型コロナウイルス収束後、
整備されたICT機器がどのように活用されていくかが、
今後、ICTが教育にしっかりと根付いていくかの大きな分岐点となる。

一人1台端末を所有することによる効果や可能性は
さまざまなところで紹介されているが、
それに伴う課題が紹介されることは少ない。
そこで、私が勤めている学校で以前取り組んだ、
一人1台端末の実践研究を踏まえ、
今後、一人1台端末が整備されたあとの課題について確認していきたい。

本校では、平成26年度より平成28年度にかけて
「一人1台タブレット端末の教育的効果と運用上の課題」という
研究主題を掲げ3年間取り組んできた。
その研究を通して、情報活用能力の向上や
わかりやすい授業の実現など、教育的効果が確認された。
いつでも自由に使えるため、教科授業以外の
総合的な学習の時間や学校行事、生徒会活動や部活動など、
さまざまな場面で活用され、情報活用能力は大変高まった。

一方、課題も確認された。
まず、一人1台端末を導入するための必要条件として、
端末の堅牢性、ネットワークの安定性、
ICT支援員の存在が挙げられた。
当時、保護者に学校指定の端末を購入してもらった。
保護者の負担も考慮して価格を抑えたため、
故障が多く、その対応に教員が追われた。
また、ネットワーク整備費用を抑えた関係もあり、
アクセス数が集中すると遅くなるなど、
安定して利用できないときもあった。
これらの課題に対応するためには、
それなりの費用をかけることも大切であるが、
ICT支援員の存在も必要であると確認された。

また、運用上の課題としては、
日々の維持管理や使用に伴う生徒指導など、
教員の負担が挙げられた。
維持管理に関しては、端末を忘れたとき、
端末が不調であったり壊れたりしたとき、
充電が切れたり充電してくるのを忘れたりしたとき、
端末修理中のときなど、個々の端末の対応に追われた。
また、授業中や休み時間、放課後での使い方の指導、
端末を使ったいたずらやトラブル等で対応することも多かった。

このように、一人1台端末を導入することにより、
さまざまな教育的効果が得られたが、
一方でさまざまな課題も確認できた。

三宅先生

中学校技術科の教員として、Windows95が広まる以前から情報教育、
特に情報モラル教育に取り組んでいる。情報教育に関する論文、
検定教科書の執筆、情報モラル教育関連の教材開発、
情報モラル教育に関する講演等を行っている。
現在は千葉大学教育学部附属中学校の副校長をしており、
また、千葉大学教育学部特命教授として、
土曜日や夜間に教職大学院生を指導している。

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