2020.10.16
「ひな壇芸人」は「リモート芸人」に勝てるか
新型コロナウイルスにより、バラエティ番組や情報番組など、
いわゆる「ひな壇」と呼ばれる大勢のタレントさんたちが
スタジオに集まって収録する番組スタイルが全滅しました。
そこで登場したのが自宅からリモートで出演する方式です。
そして、テレビ局は気付いてしまったのです。
この方式でも、十分番組が作れることを。
番組は今までと同じように進行するし、
面白い掛け合いも楽しめます。
そして何よりコストがかからない。
出演者に出す弁当も交通費も必要ない。
打合せにかかる人件費も少ない。
低コストで番組を作ることができる。
ただし、ひな壇で活躍していた芸人が全て
リモートで面白いわけではありません。
リモートでも、あるいはリモートだからこそ
面白い芸人が「リモート芸人」と呼ばれ、
重宝されるようになりました。
つまり、芸人の勢力図が変わってきたのです。
さてアフターコロナになってから、
テレビ局は以前に戻って「ひな壇」を復活させるでしょうか。
その答えはグローバル企業が教えてくれます。
大手の企業は、今後も一定の割合で
在宅勤務に切り替えることをすでにアナウンスしています。
そもそも、アメリカのAppleやGoogle、Microsoftなどは、
コロナ騒動が起きる前から、社員が一堂に集まる方式をとっていません。
在宅勤務や勤務時間が一定でないフレックスタイムが
グローバル・スタンダードなのです。
ところで、臨時休校が3カ月以上続き、
中にはタブレットでの添削教材やオンライン通信の塾で
学習してきた子どもたちがいます。
実際、有料で配信される動画や
クイズ形式の教材は実によくできています。
プロが作った教材は、教師の目で見ても感心するものが多く、
素人の教員が作る動画は質・量ともにかなうわけがありません。
そして、このような家庭学習を成立させてきた
保護者は気付いてしまうのです。
「先生、この3カ月、子どもの学習は全く心配していません。
着実に教科書の学習を進めていて、子どももよく理解しています。
学校に行くからには、学校でしか学べないことをお願いします。」
つまり、教科書の内容を効率よく、漏れなく「教える」ことは、
在宅でもできてしまう時代になったことを、
今回のコロナ騒動が明らかにしたのです。
となると、学校教育に求められる教育とは何でしょうか。
全員を集めて授業する、つまり「ひな壇芸人」だった教員は、
「リモート教員」を目指すべきでしょうか。
あるいは、「ひな壇」にしかできないことをする
「ひな壇教員」になるべきでしょうか。
その両方でしょうか。
少なくともチョークと黒板だけしか使えない教員は苦労することでしょう。
先生の教えた通りに動く子どもしか育てられない学校は、
ますます存在意義が問われるに違いありません。
だからこそ、「リモート」では実現できない授業ができる教員、
集まって学ぶことに意味のある学校を目指さなければなりません。
そうでなければ、全教員が「リモート教員」になるしかないのです。
これからは、在宅でも学校でも学びが成立する
ハイブリッドな教育環境が求められていくでしょう。
湯澤先生
足立区を皮切りに江東区、中央区、板橋区で教員生活を送る。
現在、再任用校長として板橋区立板橋第一小学校に勤務。
専門は教育方法で、主に情報教育を主たる研究領域として現在に至る。