2021.04.16
GIGAスクール構想、その先を想定する
一人1台端末の活用がこの4月本格的に開始された。
思い起こせば20年ほど前に、
山極隆先生(故人、当時富山大学教授)、
山西潤一先生(ISEN委員長)、
堀田龍也先生(東北大学教授)と一緒に、
富山大学教育学部附属教育実践開発センターの
センター長室で、昼食を取りながら、
次の教育改革について話をしていた際に、
一人1台端末の話が出たと記憶している。
まだ無線LANもやっと使えるようになったぐらいのときで、
ノートパソコンも1台20万円ぐらいした頃である。
当時中教審の委員をされていた山極先生は、
大変興味を持って、実際に委員会
(会議中かどうかは定かではないが)で
話もしていただいたようであるが、
当時は、時期尚早ということで、採用されなかった。
より具体的なビジョンが示されたのは、
2007年3月にJAPETが文部科学省の委託を受けて行った
「地域・学校の特色等を活かしたIT環境活用先進事例
に関する調査研究事業(主査 山西潤一先生)」の報告書であろう。
そこでは、2010年と2015年の教室像が描かれ、
現在のGIGAスクール構想での活用に近い
学校の様子が描かれている。
そう考えると、20年かかって、
やっと実現したか、というのが正直な思いである。
今回は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う
休校措置などへの対応ということで、
計画が前倒しになり、そのおかげで
一気に環境整備が進められた。
学校全体で同じ端末が導入されたことは、
指導の負担を考えると非常に素晴らしいことである。
ただ、今回の導入においても、
予備機まで含めて導入できた学校は少ない。
故障等の発生は避けられず、
授業等で本格的に利用すればするほど、
このようなトラブルにどのように対応するかを
考えておく必要があろう。
また、ほぼ同じ時期に導入された
機器の寿命が来ることを考えると、
数年先には機器の更新が必要となる。
ただ、次に今回と同じ規模の予算が
措置されるとはなかなか考えにくい。
現在の家庭でのPCやスマートフォンの
普及の状況を考えると、次はそれらを活用していく
形になっていくことも想定される。
おはじきや色板の入ったお道具箱と同じように、
入学時に各家庭で用意してもらうもののリストに
PCやスマートフォンを入れるためには、
これらを授業で利用することの意味や効果を、
保護者にもきちんと理解してもらう必要があるだろう。
また、一人ひとりが基本的なセキュリティ対策を実施し、
安心・安全な状況でこれらを活用できるように、
家庭も含めたセキュリティ知識の向上も
一緒に進めていく必要があると考える。
子どもたちの学びが、この取り組みを通して
大きく変わっていくことを期待したい。
黒田先生
富山大学人間発達科学部附属幼稚園長(兼任)。元 富山大学総合情報基盤センターセンター長。
インターネットやコンピュータ、テレビ等の情報通信技術の教育利用について研究している。
専門は、教育工学、情報教育、メディア教育。