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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2021.06.25

一人1台端末時代のメディアとのつきあい方

教育現場一人1台端末と
大容量の通信ネットワーク環境の整備に伴い、
各地の自治体や学校から次のような
質問をいただくようになりました。
「持ち帰った端末を学習以外に使ってもいいのか」
「不適切なページを見たりトラブルに巻き込まれたりしないか心配」
「時間制限はすべきか」
本稿では、この3つの問いへの
私の考えを紹介したいと思います。

「持ち帰った端末を学習以外に使ってもいいのか」
1. やっていいこと、いけないことを
児童・生徒とともに考えましょう。
大切なことは、児童・生徒を信頼し
考えを委ねる、ということです。
2. 学習とは何かを定義しておきましょう。
ある学校では学習とは教科書の予習復習や宿題のみ、
ある学校では趣味の創作活動も学習に含むなど
定義はさまざまです。
一人1台環境では、単にコンテンツを消費するだけではなく、
創造的な活動の機会も増やしていくことが大切です。
ただし、児童・生徒は、創造活動や調べ学習を
初めから上手にできるわけではありません。
大人が良きモデルを示し、
サポートすることも必要でしょう。

「不適切なページを見たりトラブルに巻き込まれたりしないか心配」
1. 機器には発達段階に合わせ機能制限を設定しておきましょう。
2. 小学校高学年くらいから、ネットメディアの特性や
仕組みを学んでおきましょう。
3.トラブルはまず背景の問題を検討しましょう。
要因として考えられる一つには、家庭環境の問題があります。
具体的には、「文化資本(文化的、健康的、身体的な経験)の格差」
「親の習慣(親がゲーム障害など)」
「兄弟関係の影響(年長の兄弟の使い方の影響)」
「コミュニケーション不足(傾聴、共感、褒められる関係の不足)」
などが挙げられます。(これらの環境、状態が
全てトラブルに直結するものではありません)

ゲームやSNSなどに過度に依存し
問題行動を繰り返す児童・生徒は、
その背景に目を向けましょう。
対人関係への不安や自信のなさ、
自己有用感の低さにつながる、
家族や友人間のコミュニケーションなどに
課題が無いかを確認します。
家庭環境に課題がある場合、
個別の事案に応じ行政と連携し支援します。
また、相談しやすい環境づくりや関係の構築も大切でしょう。

「時間制限はすべきか」
1. ネット機器やゲームを使うべきではない時間帯、
場所を「行動」と結びつけて考えましょう
(例えば食事中、家族と会話中、勉強中、就寝前など)。
利用時間の長さのみを問題にしないようにしましょう。
一休みする工夫は具体的に考えます。
その際、「行動を切り替える」ことを意識します。
2. 約束が守れなかったとしても
子どもを責めないようにしましょう。
叱らないけど譲らない。約束が守れたら褒める。
子どもを信頼しコミュニケーションを欠かさない。
などを意識していきましょう。

参考文献
坂本旬、豊福晋平、芳賀高洋、今度珠美、林一真
『デジタル・シティズンシップ・コンピュータ1人1台時代の
善き使い手をめざす学び』大月書店、2020

今度先生

国際大学GLOCOM客員研究員。
鳥取大学大学院修了。
鳥取県情報モラルエデュケーター。
主な著書
・「デジタル・シティズンシップ教育の挑戦」
  共著,アドバンテージサーバー
・「デジタル・シティズンシップ/コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び」
  共著,大月書店
・「スマホ世代の子どものための情報活用能力を育む情報モラルの授業2.0」
  共著,日本標準 など

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