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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2021.07.16

新型コロナウイルスによる学校情報セキュリティへの影響 ~令和2年度 学校・教育機関における個人情報漏えい事故の発生状況~

ISENで毎年行っている「学校・教育機関における
個人情報漏えい事故の発生状況」調査の調査報告書
(令和2年度)を公開しました。
この調査報告書は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が
毎年発行している情報セキュリティ白書で引用されています。

令和2年度版調査報告書の概要を紹介します。
事故件数は162件と、令和元年度の228件、
平成30年度の201件からは少なくなっています。
しかしながら、個人情報漏えい人数は
113,865人と11万人を超えています。
件数が減った要因として、
新型コロナウイルスの影響が考えられます。
年度始めは、全国一斉の学校臨時休業が延長されていました。
その後も緊急事態宣言が出されたり、
学校現場でクラスターが発生したりしました。
学校再開後も、大学は大半が
オンライン授業となったことなどが挙げられます。

大学の大半がオンライン授業となったと述べましたが、
学生がキャンパスにいなくても、
個人情報の漏えい人数が1,000人を超える事故が
4件発生しています。
この新型コロナウイルスの影響は、
月別の事故発生件数にも現れています。
過去のデータを見ると、7月が年度始めの4月に次いで
2番目に事故発生件数が多いのですが、
令和2年度は14件と平均値と同じ数値になりました。
全国一斉の学校臨時休業が5月末まで延長されていたので、
実際の1学期が1カ月半ほどしかなく、
通常の学期末とは状況が異なったためと考えられます。
その反面、年度末の3月は、過去の平均を上回っています。
年度前半のしわ寄せが来たのでしょうか。

事故の発生場所は学校内が61.1%と最も多く、
事故の種類では「紛失・置き忘れ」が48.1%と
約半数になっています。
漏えいの経路や媒体では、「書類」が64.7%と最も多く、
学校現場は紙文化が根強く残っていることが見て取れます。
漏えい人数が最も多かった経路は「システム・サーバー」でした。
この事実を見ると、統合型校務支援システムを
クラウド運用することの早期実現が望まれます。

参考資料にあるように、
個人情報を不適切に取り扱った本人だけではなく、
監督責任者も数多く処分されています。
教員研修等にこの資料をぜひともご活用いただき、
啓発の一助になれば幸いです。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC(一般財団法人全国地域情報化推進協会) テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。

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