2021.08.20
一人1台の情報端末をなぜ使うかを考える
小中学校の児童・生徒に
一人1台の情報端末を配備する
「GIGAスクール構想」の実現に向けて、
日本中の教育委員会、学校が取り組みを進めています。
そうして一人1台の情報端末がある環境で育った
中学生が進学してくるのですから、
高校も併せて配備を進めている自治体もあります。
ただ、配備された端末を「どう使うのか」という
議論にまで行き着いていない学校も多いように思います。
一人1台の情報端末が配備されることで、
児童・生徒は新しい学び方、
新しい考え方、新しい表現の仕方、
新しい情報のやりとりの仕方「も」学べるようになります。
これらの力は子どもたちが生きる、
デジタルテクノロジーが普及しているこれからの社会で
自己実現をするための大きな武器になるものでしょう。
そのためのGIGAスクール構想であり、
そのための一人1台の情報端末の配備です。
ただし、これらは一人1台端末を持たせていれば
自然に身につくものではありません。
2019年12月に出された文部科学大臣メッセージには
「これまでの我が国の150年に及ぶ教育実践の蓄積の上に、
最先端のICT教育を取り入れ、これまでの実践と
ICTとのベストミックスを図っていくことにより、
これからの学校教育は劇的に変わります」と書かれています。
先生方のこれまでの教育実践の蓄積の上に、
どのようにICTを組み込んでいくことこそが重要です。
学校での教員研修をさせていただくと、
「操作方法の説明をしなくてはならないので面倒だ」
「私はパソコンが苦手なので、あまり使わないと思う」と
正直に打ち明けてくださる先生方もたくさんいらっしゃいます。
たしかに、最初は操作に時間がかかるのは事実でしょう。
でも、ICTを頻度高く使うようになれば、
児童・生徒だけでなく先生方も慣れていくので、
中長期的に見れば問題は改善されると思います。
最初に操作に慣れることが大変なのが想定されつつも、
なぜICT=デジタルを導入しなければならないのでしょうか。
ここで考えるべきは、
「どうやって(=How)デジタルを導入するか」だけでなく、
「なぜ(=Why)デジタルを導入するか」だと思います。
前提として、「そもそもデジタルというものが
我々にとってどういうものなのか」を考えていくといいでしょう。
教員研修の講師をするときに、参加している先生方には
「デジタルとは○○だ」という文章を考えてもらっています。
「あれば便利だけどなくてもいい」や
「これからは必要不可欠」などの答えが出てきます。
みなさんならば、どんな文章を作りますか?
僕は個人的には、「デジタルとはメガネのように、
能力を拡張してくれるもの」だと思っています。
視力が弱ければ、メガネで視力を拡張して補うように、
デジタルを使うことで可能になる、
ワードプロセッシング、計算、検索、
データの保存・分析などはすべて、
「能力の拡張」だと言えると思います。
能力を拡張する道具としての教育ICTによって、
学校でどのようなことが実現できるようになるのか
考えていくことが求められています。
為田氏
フューチャーインスティテュート株式会社 代表取締役
教育ICTリサーチ 主宰
著書:『一人1台のルール』(2021年 さくら社)
共著:『学校アップデート 情報化に対応した整備のための手引き』(2020年 さくら社)