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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2022.06.10

人間工学から考える情報端末の利用

GIGAスクール構想により、
児童・生徒は一人1台の情報端末を使って学習するようになった。
それは、教育分野のみならず、
私の専門である人間工学においても大きな変化であると捉えている。
人間工学とは、人間を中心とした働きやすい職場や生活しやすい環境を実現し、
安全で使いやすい道具や機械を設計することに役立つ実践的な科学であり、
人間とシステムとの調和を理解するための学問である。
それでは、児童・生徒が情報端末を安全で快適に使えているのかを考えてみたい。
それには、情報端末の使いやすさや情報端末を使う環境などが関係する。

学校で導入されている情報端末は、基本的に成人が使うものと同じである。
そのため、低学年の児童にとっては大きくて重い端末を使うことになり、
持ち運びが必要な際には負担に感じる児童も多いかもしれない。
ディスプレイ技術に関わるため、
理想的に軽くすることは難しいという現実的な課題はあるが、
体の小さい児童が用いることへの対応も必要である。
子供に限らず、ヒューマンエラーは起こり得るものという考えに立ち、
例えば、端末を落としてしまっても壊れにくいような対策を
講じておくことも重要であろう。
情報端末の使いやすさとしては、
当然のことながら見やすさや書きやすさ、情報入力のしやすさなど、
学習に直接関わる多くのことへの対応が必要とされるが、
児童・生徒の負担を軽減して快適性を高めるという視点が重要である。

情報端末を使う環境という点では、教室が最も大きく関わるであろう。
学校の先生方はよくご存じの通り、
教室は学習に適した明るい環境となるように指針が決められている。
一方で、多くのディスプレイは非常に明るい環境では見づらくなり、
また、蛍光灯や太陽光などが映り込むと表示内容が見えなくなることもある。
そのため、使用環境に合わせて画面の明るさを調整したり、
映り込みを無くすためにカーテンを閉めたり、
端末の角度を調整するなどの対策が必要となる。
情報端末の技術進歩が期待されるところであるが、
一方で、これからは、学習に情報端末を使うことを前提として、
学校の環境を整えていくことも必要であろう。

人間工学の立場からは、
教員と児童・生徒の健康に対する配慮や対策の必要性も強く感じる。
例えば、眼の疲れである。
眼の疲れはさまざまな原因により生じるが、
学習環境と関わるのは、長時間近くを見続けることで生じる視覚疲労である。
これは、情報端末に限らず紙メディアでも同様である。
しかし、情報端末の利用においては、
表示されている内容とユーザー(教員や児童・生徒)が対話的になり、
眼を画面に近づけやすくなったり、画面に集中しやすくなったりするため、
使い方に留意する必要がある。
学習に集中することは望ましいことだが、
眼の負担軽減など健康面とのバランスを考えて、
授業の中で情報端末が活用されていくと良いと考えている。

柴田先生

東海大学情報理工学部情報メディア学科 教授。
文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」委員。
日本人間工学会「子どものICT活用委員会」委員長。
人の心理特性や生理特性、行動特性などに着目して、
情報メディアの効果的な活用に関して研究している。

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