2022.09.09
児童生徒の情報活用能力の育成に向けて 1人1台環境下における認知の特性に注目した授業づくりの要点①
GIGAスクール構想の推進に伴い、
文部科学省は、今後の教育では、
社会で生きていくために必要な資質・能力を学校で育てるため、
社会生活と同様に学校の生活や学習においても、
ICT環境は鉛筆やノートなどの文房具と同様に不可欠なものであることを
強く認識するよう示している。
相模原市では、令和2年度中に環境整備が完了したが、
急速な整備に伴い、タブレットPCの活用について
「使い方が分からない。」「授業中にうまく動かなかったら困る。」
「トラブルがあったときの指導や使うときの約束を、
どのように指導したらよいかが分からない。」など、
教員の不安が顕在化するであろうことを予測し、
今行われている授業に、どのようにタブレットPCをプラスαするかではなく、
教育の新たな前提条件として、
1人1台環境下での学びや授業とは何かを明らかすることが必要と考えた。
そこで、令和2年度より、本市8名の教育研究員で
「タブレットPCを使った理想の授業」について研究を始めた。
本研究において、タブレットPCを使った理想の授業とは、
子どもの学習の過程が豊かになるよう、
子どもがタブレットPCを鉛筆などと同様の道具として利用し、
それを含めた解決策を自ら選択できる状況にしたり、
教員は子ども個人に応じた学習課題を与えたりすることで、
資質・能力が形成されるとともに、学習の過程を振り返ることを蓄積して、
教員は適切な指導と評価の検討を行い、
さらに学習の過程に生かす循環を形成することとした。
そして、これらのことはICTを使うスキルが前提となっている。
本研究においては、この理想の授業をつくるための要件を明らかにしている。
「理想の授業」は初め、抽象度が高く、
その解釈が教育研究員によって分かれたり、授業方略など不明瞭であったりして、
要件を導き出すことができないため、要因となるものの関係性について、
議論し定義づけをするなどし、授業づくりに必要な要件を抽出し
「児童生徒は個々で特性が違うことを理解する」や「課題を適切に設定する」
「学習の過程で、児童生徒の主体的なインプットおよびアウトプットをICTで拡張し、
内容知と方法知を獲得させる」「振り返りにより獲得した方法知と内容知を定着させる。
また、まとまり毎にICTで蓄積した多様な経験を活用した振り返りを行い、
資質・能力を育成する」
「これらの進行が適切か評価する」という5つの要件を明らかにした。
令和4年3月、本研究を踏まえた実践などを集約した
「GIGAスクールハンドブック追補編」を発行し、相模原市教育センターHPに掲載した。
この資料は、令和3年3月に発行「GIGAスクールハンドブック」を追補するものであり、
その他の指導資料とともに、
本市の小中学校などの情報教育の資料として活用されている。
本研究の実践については、次号から研究員の先生方より紹介する。
須藤先生
平成19年度より相模原市立の中学校技術教諭として15年間、
市内3校での勤務を経験した。
令和4年度より相模原市教育委員会に異動となり、
情報教育の推進に向けて勤務している。