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研究を重ねた専門家が指南 学校ICT・セキュリティコラム

学校ICT 専門家・研究者のコラム

2023.04.14

不易と流行の視点で考える一人1台端末の活用

GIGAスクール構想により、各校に一人1台端末と
高速ネットワーク通信の環境が整った。
文部科学省は、一人1台端末は令和の学びのスタンダードだとしているが、
児童・生徒は授業の中でどの程度端末を活用しているのだろうか。
令和4年度全国学力・学習状況調査では、
児童・生徒に「前年度までに受けた授業で、
PC・タブレットなどのICT機器を、どの程度活用しましたか。」
と質問紙調査を実施した。
その結果、「ほぼ毎日」と回答したのは、
小学校で26.9%、中学校で22.4%であった。
「週3回以上」は、小学校で31.5%、中学校で28.9%であった。
鉛筆やノートと同様の文具としての活用というには、
程遠い数値ではないだろうか。
さらに、「月1回未満」と回答した児童・生徒も、
小・中学校でそれぞれ5%程度いた。
これはせっかく整備された端末を
ほぼ活用していない状況であることを示している。
 
 これらのことから、インターネットに接続された端末を活用して、
さまざまな情報を収集したり、それらの情報を整理・分析したり、
分かりやすくまとめたりする経験をたくさん積み、力をつけている児童・生徒と、
そうではない児童・生徒の差が大きく広がっていくことが危惧される。
教育の機会均等が第一義的な目標である義務教育において、
これは看過できない状況である。
原因はさまざまあろうが、教師の考え方が端末の活用に
ブレーキをかけている状況もある。

 かの俳人松尾芭蕉は俳諧の理念として「不易流行」を掲げた。
先日、ある研修会において、この言葉を使っていた教師がいた。
アナログが「不易」、デジタルが「流行」だとした上で、
デジタルのような流行に踊らされるのではなく、不易こそが教育の本質であるので、
端末の活用には懐疑的だ、といった趣旨の発言をしていた。

 不易流行とは、「いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、
新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと」
(三省堂 新明解四字熟語辞典)である。
不易と流行は相反するものではない。

 新しく変化を重ねているものを取り入れていくことで、
本当に大事な不易が実現しやすくなることもある。
例えば、一人一人の子供を大事にしたい、一人一人に力をつけたい、
といった思いは教師ならば誰もが持っているだろう。
時代を超えて普遍的なこうした教師の思いを不易とするならば、
デジタルツールがあることで、教師の手元で一人一人の様子を
リアルタイムに把握しやすくなったり、
AIドリルで一人一人の理解度に応じた問題が出しやすくなったりする。
不易として大事にしたいことは、
実は流行を取り入れることで、より近づくこともできる。

 教師の考え方がアクセルとなり、児童・生徒が一人1台端末を
日常的に活用して力をつけていくことを願っている。

三井先生

三井一希

山梨大学 教育学部・准教授。博士(学術)。
山梨県公立学校教諭、台北日本人学校(台湾)教諭、
常葉大学講師等を経て現職。
専門は教育工学(特に学びのデジタル化,授業デザイン)。
文部科学省ICT活用教育アドバイザー等を務める。

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