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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2024.03.14

地道な努力を続けることこそが

フィンランドを訪れ、中学生の授業を見学させていただいた時の事である。
グループごとに課題に取り組んでいる様子であったが、教室の後ろのすみで
女子生徒3名がスマホ片手にコソコソ(私にはそう見えてしまった)
何かをやっている姿が目に入った。
ゲームでもやっているのかと勘ぐり、そっとのぞいてみると、
そこには、授業内容の数式を見ながら、話し合っている姿があった。
遊んでいるのだろうと勘ぐり、疑ってしまった自分を恥じた。

振り返って日本。令和2年3月にコロナウイルス感染拡大により
急に始まった一斉休校。
あの頃は、「子供たちの学びを止めるな」と、教材を届けたり郵送したり、
教師は奮闘した。
その後、GIGAスクール構想が前倒しになり、1人一台の環境が整っていった。
しかしその使い方は、オンライン授業での活用であり本来想定していた活用とは
違う形で導入されていったのが現実であった。
学校が再開され、授業での活用が始まったものの
「立ち上がり画面は変えてはいけない」「先生の指示があるまではタブレットに
触ってはいけない」と、活用の制限ばかりが目立つ活用になってしまうことが多かった。
「タブレットに触らせると何か授業には関係ないことをやってしまう」という
思い込みが、多くの日本の教師にあった(もしくは「ある」)。
日本ではゲーム機としてPCが入ってしまったことが、この感覚を持ってしまう
大きな要因であると思う。
社会全体がこうした感覚になってしまっていたのである。

「PCは、遊ぶ道具である」という感覚から「PCは学習に役立つ道具である」という
感覚に変えていくには、長いスパンがかかるのかもしれない。
しかし、社会全体の感覚を変えていくためには、教師(学校)の意識改革と
地道な努力が必要である。
そのためには、研修体制の確立、管理職のリーダーシップ、教師同士の情報交換、
さまざまなレベルでのさまざまな努力が必要である。

「タブレットを活用した授業改革」は決して一時期の「流行」ではない。
世界に遅れをとらないためにも、劇的に変化していく社会の中で子供たちが
幸せな人生を送るためにも、成し遂げなければならないことである。
日本の教育に携わる全ての人々の努力で、学校現場に導入されたタブレットが真に
有効活用され、全ての子供たちが恐れることなくこの有効な道具を
使いこなせるようになることを願って止まない。

太田先生

太田 耕司
東京都中学校長会事務局 次長
元 千代田神田一橋中学校 校長
元 千代田区立お茶の水小学校幼稚園  校園長

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