2024.05.23
新しいデジタル教材の充実と校内ネットワーク環境の課題
一人1台のGIGA端末の整備が5年目となりました。
この数年間で多くの先生方のチャレンジングな実践から、
ARやVR、メタバースなどを活用したデジタル教材の
さまざまなバリエーションが生み出され、
子供たちが選択できる学びのツールが増えてきました。
私は令和4年度よりオーケストラのVRの音楽鑑賞教材を制作し、
中学生を対象に授業実践しています。(※)
これまでの音楽鑑賞教材はDVDなどの2D映像が主流でした。
オーケストラなどの複数の楽器の音色が一斉に演奏されている教材では、
子供たちがそれぞれの楽器の音色を理解することは難しく、
既存の教材に課題を感じていました。
大阪教育大学シンフォニーオーケストラ、日経BP、
株式会社アルファコードと共同で制作したオーケストラのVR映像は、
楽器の音色をそれぞれの楽器の近くで鑑賞できるので、
子供たちは自らそれぞれの楽器の音色に気づくことができるようになり、
楽器の音色の理解が格段に進むようになりました。
また、VR映像の利点を生かして制作したこの教材は子供たちの
好奇心をくすぐり、「この楽器はどんな音色がするのか?」
「作曲家はどうしてこんな音楽をつくったのか?」といった疑問が生まれ、
その後の学習により主体的に、また探究的に取り組む子供たちが
多く見受けられるようになりました。
VRと聞くと、VRゴーグルが必要であるように思ってしまうことが多いのですが、
GIGA端末でも再生することができます。
GIGA端末なら、一人一人 が自分のペースで見たいと思う視点で鑑賞でき、
気づいたことは他者と端末をのぞき込みながら共有し、学び合うことができます。
このように、全国の学校現場で活用できる新しいデジタル教材が増えてきている一方で、
校内のネットワーク環境の充実が課題として挙げられます。
文部科学省「学校のネットワークの現状について」(令和6年4月)によると、
令和5 年11〜12月に行われた調査で、文部科学省が推奨するインターネットの
通信環境を満たしている学校は2割にとどまりました。
制作したVR教材は、インターネット経由で再生します。
私が勤務する学校でも、VR映像を生徒一人一人のGIGA端末で
再生し鑑賞させようとすると、令和5年12月ごろの時点で問題なく
再生できるのは32人程度のうち1〜2人というのが実状でした。
制作したVR映像を十分に活用するにはネットワーク環境のさらなる改善が
必要であることを実感しています。
手元にあるGIGA端末でいつでも自由にさまざまな教材にアクセスし、
自ら学ぶことのできる環境のさらなる整備が進むことを期待し、
子供たちのより良い 学びを目指して日々研鑽に努めてまいりたいと思います。
※制作したVR映像はこちらからご覧いただけます。
https://www.osaka-kyoiku-music.com/vr/
内兼久先生
内兼久 秀美
豊中市立第七中学校音楽科教諭、大阪教育大学産学官イノベーション共創センター研究員。
豊中市公立中学校教諭、大阪教育大学附属池田中学校教諭を経て現職。
VRの音楽鑑賞教材の制作・実践に力を入れ、
NEW EDUCATION EXPO 2023等で実践発表を行う。
ICT夢コンテスト2023優良賞、第39回東書教育賞奨励賞受賞。