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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2024.08.08

授業DXのヒントは目の前に?

GIGAスクール構想が打ち出されてから5年が経とうとしています。
クラウドを活用した一人1台端末の使用方法についての議論が活発になり、
「授業DX(デジタルトランスフォーメーション)」が進んでいます。
これにより、さまざまな授業の形が生まれ始めていますが、
一つの明確な正解はきっと存在しないでしょう。

なぜなら、複雑な問題解決を成し遂げるための
高次な資質・能力の育成方法は、多様であるからです。
私たちが職能を向上させる方法が一様でないのと同様に、
教育も一様ではありません。
ただし、何をやっても良いというわけではありません。
子供たち一人一人が確実に成長し、未来の社会の担い手として
力を伸ばしているかどうか、本質的な問いに胸を張って
答えられるものでなければなりません。

具体的にどのような指導をすれば良いのか、
ICTをどう活用すれば良いのか、どのような授業が力をつけるのか、
といった疑問も絶えないことでしょう。
しかし、自分なりの答えが必ず現場から見つかるはずです。
悩みながら、そしてその悩む過程も楽しみながら、
このトランジションを味わうことが大切です。
ヒントは身近にあることが多く、気付いて いないだけなのです。

例えば、最近の回転寿司では 、どのネタも同じ皿の色で
提供されることが増えてきました。なぜでしょうか。
昔は、ネタと皿の色が対応しており、
残った皿の数で会計を計算していました。
しかし、今ではタブレットで注文するため、
皿の色は同じでよくなりました。
それでも、色んな皿の色で提供している店があります。
注文はタブレットなのに、以前の「マグロは赤い皿で、玉子は白い皿で」
という当たり前から脱しきれていないのです。
この思い込みを脱した寿司屋では、新人がネタと皿の対応を覚えたり
確認したりする必要がなくなり、会計も楽になったため働き方改革が進みました。

私たちは、当たり前に行っていることの
必要性を問い直すことを忘れがちです。
「この活動は本当にまだ必要かな」と考えるゆとりが必要です。
しかし、今の学校は忙しすぎるかもしれません。
「この校務の作業は本当に必要かな」と
問い直すことから始めるのが良いでしょう。
この手のことは一人では気付きにくいので、協働が必要です。
近い将来、メタバースや生成AIも教育の深い部分に入り込むでしょう。
これらを活用したDXもそのうち起こるはずです。
しかし、まずは目の前の当たり前に気付くことから始めるべきです。
DXは最新鋭の技術を活用するだけではありません。
当たり前を問い直し、誰にでも扱える技術を使い、楽で便利にし、
そして子供たち一人一人が学びやすい環境を作ることが重要ではないでしょうか。

村上先生

村上 唯斗 
横浜国立大学教育学部附属 教育デザインセンター助教。
東京学芸大学教育学部、同大学院、小学校講師を経て現職。
一人1台端末を活用した授業や、情報教育に関する研究に従事。

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