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2024.10.10

心をつなぐバーチャル不登校支援

渋谷区が東京都のVLP(バーチャル・ラーニング・プラットフォーム)での
不登校支援「バーチャルけやき」を開始して、もうすぐ1年が経ちます。

バーチャル不登校支援を始めるにあたり、大切にしたのは職員の共通理解です。
子供同士の偶発的なコミュニケーションの場、誰とも会わない生活から社会への第一歩、
外に出られないけれど誰かに相談できる場など、
教育センターの職員全員でコンセプトを共有し、
子供たちの心の居場所としての不登校支援をスタートさせました。

渋谷区の特色は、心理士を常駐し「そうだんルーム」を作ったところです。
ひよこのアバターの心理士「たこやきちゃん」は子供たちに大人気で、
話し相手やバーチャルカウンセリングを行っています。
リアルのけやき教室(渋谷区の相談指導教室)から参加している子と、
家から参加する子が混ざっておしゃべりしている様子を見ると、
バーチャルのコミュニケーションの可能性を感じます。
最近は都の支援員さんの発案でオンライン部活を始めており、
楽しそうにチャットやおしゃべりをする様子が見られます。

この1年弱の様子を見ていると、子供たちは、学習のフォローというよりも、
人とのつながりを求めて来ていることが分かります。
ここを利用している子は、リアルのけやき教室に通室している子以外に、
完全不登校でどこにもつながっていなかった子も含まれます。
家から出られない子には、スクールソーシャルワーカーが
家庭訪問をしてアカウントを渡しています。
バーチャルの利用を経て、リアルのけやき教室につながる子も少しずつ出てきました。

知らない人ばかりのところに初めて行くのは大人でも躊躇するものがあります。
しかも不登校であったら、適応指導教室に行くまでのハードルはとても高いです。
バーチャルの世界で知ってから行ってみると、
「VLPにいた〇〇先生や〇〇ちゃんがいてくれた」というように、
安心材料の1つとなります。
また、アバターならいつもと違う自分になれて
話しやすいという不思議な魅力もあるようです。

視察などで一番多く聞かれるのが、
「渋谷区はバーチャル用に人の配置をしているのですか?」ということです。
渋谷区でもこの取り組みは始まったばかりなので、
特別に人を配置しているわけではありません。
けやき教室の職員や教育センターの心理士が通常の仕事を
しながらバーチャル空間に入り、できる範囲での対応をしています。
東京都の支援員が常駐してくれているのも大きいです。

バーチャル不登校支援は空間を用意すれば終わりではなく、
中にいる人の反応や声掛けがあってこそ子供たちが入りたいと思える世界になります。
渋谷区では心理士を中心として職員が前向きに取り組んでいることで、
いつも温かい雰囲気にあふれています。
不登校の子たちがほっとできる空間、
他の人との関わりを楽しいなと思ってくれる空間が持続できるよう進めてまいります。

細田先生

細田 梨絵
渋谷区教育センター指導主事

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