2025.02.13
ICT教育推進には管理職が重要
GIGAスクール構想により、
全国の小・中学校の全ての子供たちに端末が整備されて5年目となるが、
「まだ端末活用が進んでいない地域がある」という話題を数多く耳にする。
世界では、今まで考えもしなかった生成AIが登場し大きな話題となり、
それを活用した自動運転や人工知能などの開発が進み、
またもや日本は大きく出遅れてしまっている。
今、小・中学校に通う子供たちは、
そうした誰も予測できないSociety5.0の未来で活躍するためには、
受け身の学習ではなく、常に知的好奇心を働かせ、探究していくことが求められている。
しかし、いくつかの学校は、今日やるべきことをこなすことで精いっぱいとなっていて、
未来を見据えた学校を創ろうという考えに至っていないのが現状である。
目の前のテストで良い点を取らせようと、教師は一生懸命に子供たちに教え込む。
子供たちはそれに応えようと必死に憶えようとする。
先生の言うことを聞き、先生が喜ぶような答えを懸命に探し、
教師の意図に沿わない答えを出した子供は認められないのである。
また、授業改善の意欲を持ち、周りの誰も行っていない新しい取り組み
(プログラミング、生成AIの活用)などに挑戦しようものなら、
「そんなことをして成績が上がるのですか」と言われる始末である。
そうした状況を打破し、学校にやる気を取り戻すのが管理職の役割である。
私は、平成30年4月に開校した「つくば市立みどりの学園義務教育学校」で校長を務めた。
ICT教育を推進するにあたり、私がしたことといえば、学校のビジョンを示したことと、
いろんなことにチャレンジしたいという先生方に対して
「いいね」と後押ししたくらいである。
令和2年4月、コロナにより全国の学校が休校となった。
しかし、学びを止めることはできないと考え、
先生方と考えたのが「教師による授業の動画配信」である。
先生方は、電子黒板を使って、授業をするのをビデオで撮り毎日配信した。
これには、先生方からある懸念あったため、校長として、
保護者に「コロナで学びを止めないように、毎日、授業の動画を配信します。
教師が言い間違えしたり、失敗したりしても編集しません。そのまま配信します。
そのほうが、リアルな感じで楽しいと思います。
子供たちの学びの保証のためによろしくお願いします」と伝えた。
保護者にも理解していただき、コロナを乗り切ることができた。
その後、学校は、新しい校長と先生方でさらに学校改革を推進し、
今では文部科学省の生成AIのパイロット校になり、全国に情報を発信している。
先日、授業を参観する機会があったが、
これまで以上に子供たちは自信満々に自分の研究を説明し、
教師も楽しそうに生成AIを活用していた。
現在の校長は、ICT教育を専門に行ってきたわけではないが、
教師のやる気を引き出し、先生方も明るく楽しみながら授業を行っているのである。
これまで行ってないことにチャレンジすることは、勇気と覚悟が必要だが、
それを実現させることができるのは、管理職しかいない。
現状に不満ばかり述べるのではなく、先生方を信じてチャレンジさせてあげて、
素晴らしい学校になることを期待している。
毛利先生
毛利 靖
茨城県公立学校教員採用。小中学校担任、つくば市教育委員会情報教育担当指導主事、つくば市総合教育研究所長、同市みどりの学園義務教育学校長、茨城大学教育学部教授。第10期中央教育審議会 初等中等教育分科会 「新しい時代の初等中等教育の在り方」特別部会臨時委員。全国ICT教育首長協議会特別顧問