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学校ICT 専門家・研究者のコラム

2025.06.12

令和6年度 学校・教育機関における個人情報漏えい事故の発生状況 ―調査報告書―

ISENで毎年実施している個人情報の漏えい事故の発生状況調査の
令和6年度版の報告書内容をご紹介します。

この調査は、令和6年4月1日~令和7年3月31日の間に、
学校、公的教育機関で発生した児童・生徒・保護者などの
個人情報を含む情報の紛失・漏えい事故についての公開情報を調査し集計したものです。
公表されていない事故もあると思われますので、発生したすべての個人情報漏えい事故を
網羅したものではありませんのでご承知おきください。

※この調査内容は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行している
情報セキュリティ白書で、教育機関における個人情報紛失・漏えいの現状として、
毎年、データが引用されています。
詳細はhttps://www.ipa.go.jp/publish/wp-security/index.htmlをご覧ください。

1)令和6年度の事故発生件数は215件でした。
毎年200件前後の事故が発生しておりなかなか減る気配がありません。
この調査は前に述べたように教育委員会や学校が公表しているものだけなので、
公開されていないものを含めると実際はかなりの数に上ると考えられます。

2)個人情報漏えい人数は初めて100万人を超え1,592,729人となりました。
個人情報漏えい人数が最も多かった経路・媒体は「パソコン」で120万人を超えており、
これが全体の数字を押し上げる結果となっています。

3)過去15年の月別の事故発生件数を見ると、4月の年度始め、
1学期末の成績処理時期の7月、年度末の3月と教員が多忙な時期に多く発生しています。
しかしながら、令和6年度は6月、1月も多く事故が発生しており、
これまでの傾向と異なる結果となっています。
多忙な時期は、学校管理職が気を配り、同僚同士で声掛けするなどして
事故を未然に防ぐ活動が必要です。

4)事故発生場所をみると、「学校内」が77.2%であり、8割近くとなっています。
令和5年度は84.0%、令和4年度は77.5%と近年同じような傾向が続いています。
個人情報の持ち出しを禁止している所も多いので、
学校外の比率は以前よりも少なくなっているものと考えられます。
学校内の事故は「紛失・置き忘れ」「誤配布」「誤送信」「誤廃棄」が主です。

5)種類別の事故発生比率では、「紛失・置き忘れ」が47.0%と半数近くとなっており、
昨年度も48.9%と多くなっています。
続いて「誤公開」が20.5%となっており、令和5年度の16.8%から増えています。
「誤送信」は12.6%、「誤配布」8.8%と続いています。
「誤」の文字が目立ちます。「紛失・置き忘れ」も「誤り」と考えられますので、
人為的なミスが大半を占めています。人為的なミスは各個人が気を付けることで
かなり防げるものだと考えますが、なかなか減りません。

6)漏えい経路・媒体別事故発生比率は、「書類」が42.8%で最も多くなっています。
令和5年度も48.1%で最も多くなっており、
いまだに学校現場は紙文化であることがよく分かる結果となっています。
続いて「インターネットサービス・アプリ」が22.0%、
「電子メール」9.7%、「パソコン」9.3%となっています。

7)漏えい経路・媒体別の個人情報漏えい人数では
「パソコン」が圧倒的に多く、1,206,765人、
令和5年度の33,699人を大幅に上回りました。
原因は種類別事故発生比率を見ると、「誤公開」「誤送信」「誤配布」
「不正アクセス」「ワーム・ウィルス感染」「盗難」などによるものだけでなく、
「紛失・置き忘れ」も含まれると考えられます。
紙の書類とは異なり電子化されたデータは一度の事故で多くの個人情報が漏えい、
事故後の影響も懸念されますのでより注意が必要です。

参考資料にありますが、漏えい事故を起こした本人だけではなく、
監督責任により管理職も数多く処分を受けています。
学校管理職の方は、学校が多忙な時期などに、
見回りや声掛けをして常に注意喚起を図ったり、
1人ではなく複数人で確認やチェックを行ったりするなど
組織的にセキュリティ対策を講じていただくことが必要です。
この調査報告書は、メディアでの紹介や研修での活用が増えています。
学校現場や教員研修の場で活用され啓発の一助になり、
セキュリティ事故が減ることになれば幸いです。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC(一般財団法人全国地域情報化推進協会) テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。

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