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2025.09.11

令和8年度文部科学省初等中等教育局概算要求

8月末に令和8年度の概算要求が各省庁から公表されました。
これから財務省との折衝を経て12月頃に正式な令和8年度予算案が決定し、
順調にいけば令和8年3月に予算成立となります。
ここでは、ISENの活動に大きく関係する
文部科学省初等中等教育局から出されている概算要求に関して見ていきます。

1.教育の質の向上に向けた、学校における働き⽅改⾰の更なる加速化、
教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実の⼀体的な推進

教員の定数改善を⾏うとともに、
教職調整額の改善や主務教諭の創設等の教師の処遇改善が
主な目的で義務教育費国庫負担金として1兆6,504億円が計上されました。

さらに、学校における働き⽅改⾰の推進のための
⽀援スタッフの充実に153億円を計上しています。
教師の負担軽減のための教員業務⽀援員、
副校⻑・教頭マネジメント⽀援員等の⽀援スタッフの充実とされています。
教員業務支援事業の内容は、教師の負担軽減を図り、
教師が児童・⽣徒への指導や教材研究等により注⼒できるよう、
授業準備の補助やデータの⼊⼒・集計、各種資料の整理、
⾏事や式典等の準備補助等をサポートする
教員業務⽀援員(スクール・サポート・スタッフ)の配置を⽀援となっています。
ISENでまとめている個人情報漏えい事故の統計でも
教員の多忙な時期に事故が多く発生しています。
業務支援員等の配置で教員の負担軽減が進むことを期待します。

2.GIGAスクール構想の更なる推進と学校DXの加速
情報活⽤能⼒の抜本的向上、校務DXの更なる加速及び
基盤整備178億円+事項要求(10億円)が計上されました。
(※事項要求とは、必要な金額を示さずに事業項目だけを記して予算要望すること。
最終的な中身は年末に翌年度予算案を決める際に詰める。)
1)学習指導要領改訂を⾒据えた情報活⽤能⼒の抜本的な向上
⽣成AIなどデジタル技術の発展は、多様な個⼈の思いや願い、
意志を具現化し得るが、デジタル化の負の側⾯の顕在化や、
デジタル競争⼒が他国の後塵を拝しているなどの課題がある。
しかし、現在の教育課程では、
情報活⽤能⼒の育成に係る指導内容が不⼗分であり、
かつ⼩中⾼通じた育成体系が不明確。
また、指導に必要となる条件整備も⼗分とは⾔えない。
そのような中、次期学習指導要領において
情報活⽤能⼒を抜本的に向上することが議論されており、
その⽅向性を⾒据え、次期学習指導要領の全⾯実施を待つことなく、
教材開発や研修コンテンツの充実、
指導体制の強化を総合的に⽀援することが必要であるとして、
新規で8億円が要望されています。
次期学習指導要領実施前から動き出すようです。

2)校務DX等加速化事業
・「経済財政運営と改⾰の基本⽅針2025」(令和7年6⽉13⽇閣議決定)においては、
2029年度までを緊急改⾰期間と
位置付け時間外在校等時間の⽉30時間程度への縮減を⽬標としており、
その有効な⼿段である校務DXを通じた働き⽅改⾰を加速していく必要がある。
・ 校務DXを加速するには、「今の環境でできる校務DX」、
「環境整備を伴う校務DX」を両輪で進める必要があるが、
これらの校務DXを進めるに当たり、「どのように進めて良いのか分からない」、
「技術的知⾒が不⾜している」など、
学校・教育委員会それぞれに課題が存在しており、この解消が急務。
また、校務DXの実現に当たっては、情報セキュリティ対策が⼤前提であることから、
情報セキュリティに関する環境変化や技術⾰新が早いことを踏まえつつ、
各教育委員会が適切な情報セキュリティ対策等を講じることができるよう⽀援する必要がある。
このような現状と課題を踏まえ校務DXの加速化が図られています。
情報化が進めば当然セキュリティ対策が必要で、
個⼈情報保護の徹底を含めた教育現場の情報セキュリティ対策にも
予算が計上されています。

前述以外にも「⽣成AIの活⽤を通じた教育課題の解決・教育DXの加速」に8億円、
「次世代の学校・教育現場を⾒据えた先端技術の利活⽤」に1億円、
「教育DX環境を⽀える基盤ツールの整備・調査研究」に
20億円と関連する予算が出ています。
興味がある方は、文部科学省の概算要求資料に一度目を通してください。

※概算要求の金額は財務省との折衝後に12月頃に正式な予算案となります。
この通りの金額とならない場合がありますのでご承知おきください。

ISEN副委員長 井上

株式会社JMC
APPLIC(一般財団法人全国地域情報化推進協会) テクニカルアドバイザー。
校務情報化や情報モラルに精通し、文部科学省や総務省の委員会や委託事業にも参画している。

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