2026.01.08
AI時代の学びを支えるAISENへ
新年、明けましておめでとうございます。
GIGAスクール構想も進み、次期学習指導要領では、
子供たちのリアルな学びをデジタルが支えるデジタル学習基盤を
前提とした教育活動が謳われています。
従来の一斉授業の中では、多様な子供たち一人一人に向き合う指導が難しかった中で、
一人1台端末はそれぞれの習熟度や興味関心に応じた自己調整学習を可能にしました。
しかしながら、
端末を持ったからすぐにそのような学習に向き合えるわけではありません。
そもそも、学ぶ意欲のない子供に、
どんな素晴らしい道具を与えても無意味な道具でしかないでしょう。
PISA2022の結果を見ても、読解力や数学的リテラシー、
科学的リテラシーは、OECD加盟国中トップレベルであるにも関わらず、
言われなくても学校の勉強にじっくり取り組むや、
学校の勉強をするやる気を出すなど、主体的に学習に取り組む態度や、
実生活において数学を使って課題解決する自信が低いという傾向が見られます。
知識はあるが主体的にその知識を使いこなせていなのです。
知っていること・できることをどう使うかという、
アクティブ・ラーニングが言われてもう10年以上にもなるのに、
まだまだそのような活動が行われていない現状が見て取れます。
国際教育到達度評価学会のTIMSS2023の報告でも、
学校で、デジタル・リソースが十分に使える、
それらの教材が学習を楽しくしてくれるという項目がありますが、
我が国はまだまだ低い評価です。
一昨年、教育の情報化を先駆的に進めている台湾の教育省を訪問し、
これからの教育についての意見交換をさせていただきましたが、
台湾では、小・中・高等学校デジタル学習精進プロジェクトのもと、
小学校1年生から高校3年生までを対象に、
「デジタル学習コンテンツの充実」「モバイル端末の提供および
無線ネット接続環境の整備」「教育関連ビッグデータの収集・分析」の3課題を進め、
教師の支援と児童・生徒の自己調整学習能力と
学力の向上を目指しているとのことでした。
まさしく、我が国のGIGAスクール構想と同じです。
共通の学習プラットフォームの上に60万学習コンテンツが整備され、
しかも無料で利用できるとのこと。
特に基礎基本的な学習のほとんどがこのプラットフォームを活用しての学習、
中には児童・生徒の回答に応じてAIが習熟度を判定し、
適切なコンテンツへ導くシステムもありました。
近い将来、AI技術の進歩で、
教科書をもとにした知識理解はAI先生に置き換わる日が来るかもしれません。
AIの教育利用が進めば学校の役割も変わります。
アクティブ・ラーニングに言われるように、
学んだ知識や技術をどう活かすか、社会に目を向けた問題解決学習が、
学校での中心的な活動になる日が来るのではないかと思います。
まさしく探求活動です。探求に関しては、
10年ほど前にISENで調査に行ったオーストラリアを思い出します。
オーストラリアでは、2014年から、
国の新たな3次元カリキュラムの中で、
教科として「デザインと技術」「デジタル技術」を導入しました。
ここでは、単に技術を教えるのではなく、
現代社会を支える技術がSTEAMに代表される様々な教科の基礎知識や
技術から作り上げられているということを理解するというコンセプトのもと、
教科横断的な授業が実施されていました。
EをEngineeringではなく、Enterpriseに置き換え、
アントレプレナー教育に力を入れている学校もありました。
次期学習指導要領では、次代に求められる情報活用能力の抜本的な向上を目指し、
総合的な学習の時間などの改善が検討されているとのことです。
活用能力を習得するのは大事ですが、それを活かす問題発見・
解決学習の充実が望まれます。
一人一人の能力に応じた個別最適な教育はAI先生に任せ、
新たな価値を創造する協働的な学びの場と学校がなり、
先生も児童・生徒も、時にAIも仲間に入れた活動が展開される、
そんな時代が来る日も遠くないと思います。
しかしながら、AIがどんなに進歩しても、
個々の児童・生徒の日々の変容を最も把握しているのは先生です。
技術と先生の経験値が相まってこそ、誰一人取り残さない教育ができるように思います。
さて、ISEN(Information Security for Education Network)も、
AI時代を反映して、AISEN(AI Innovation and Smart Education Network)と改名し、
これまでのネットワークセキュリティのみならず、
生成AIやメタバースなどをはじめとする先端技術と教育を融合させ、
次世代に求められる学び・人材育成など、幅広く活動を展開していくつもりです。
今後ともご支援ご鞭撻の程、どうかよろしくお願いいたします。
山西 潤一
富山大学 名誉教授、上越教育大学監事
日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)会長
ICT-CONNECT 21 会長
日本教育工学協会(JAET)評議員
日本教育工学会名誉会員
一般社団法人AIイノベーション&次世代教育ネットワーク(AISEN)理事長
インターネットやコンピューターなどの情報通信技術を用いた
教育方法や学習環境の開発に関して、学校教育から生涯学習まで幅広く研究している。
専門は、教育工学、情報教育。



